不動産投資

不動産投資

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  • by 太田孝幸
  • 2019-08-18
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不動産投資分析

不動産投資をする上での判断材料として、キャッシュフローの分析が重要であり、将来の収益をより細かく把握することが的確な判断につながります。不動産投資で最もポピュラーな投資分析として「利回り」があります。「利回り」と言っても「粗利回り」「純利回り」などいくつか指標があります。また「純利回り」にも、運営純利益(NOI)に対する「NOI利回り」もあれば、純収益(NCF)に対する利回り「NCF利回り」もあります。その他にも大きく「直接還元法」と「DCF法」があります。投資分析や不動産評価の実務ではどちらもよく使われる手法ですので、順を追ってご説明いたします。

 

不動産の利回り

粗利回り

<粗利回り(%)=年間総収入÷総投資額×100>

粗利回りは、表面利回り、グロス利回りや単純利回りとも呼ばれています。不動産投資サイトなどに掲載している「利回り8%」という表示は、粗利回りとしていることが多いです。

純利回り(NOI利回り)

<純利回り(NOI利回り)(%)=(運営収益-運営費)÷総投資額×100>

純利回り(NOI利回り)は、ネット利回りやキャップレート(CAPレート)とも呼ばれています。賃貸不動産にとってもっとも基本的な利回りです。

年間総収入-諸経費支出の額は、NetOperatingIncome(NOI)と呼ばれ、投資計算を行う際の不動産の収益性を把握する基本的な数値であり、投資計算上最も重要な項目のひとつです。

純利回り(NCF利回り)

<純利回り(NCF利回り)(%)=(NOI+一時金の運用益-資本的支出)÷総投資額×100>

一時金の運用益とは、貸主は借主から敷金や保証金等の一時的な預金です。預り金運用の制約程度にはよりますが、預り金を全額預金しておくことは資金運用効率の低下を招きます。低リスクの金融資産等への再投資を図ることが通常です。

資本的支出とは、大規模改修や取り換え、性能向上工事などのための支出です。常時発生するものではありませんが、築年数の経過によって発生する可能性は高くなり、支出額も上がっていきます。

不動産鑑定評価では、NCFを基準とした収益価格を求めることが原則となっています。

ちなみにNCFは、Net Cash Flowの略です。

総合収益率

総合収益率(%)=(インカム・リターン)+(キャピタル・リターン)

インカム・リターンとは、一期間における賃貸運用益に係る収益率。計算式は(純収益÷機首の資産価格)

キャピタル・リターンとは、資産評価損益に係る収益率。計算方式は(期末の資産価格-機種の資産価格)

「例題」

ある不動産を10億円で購入し、1年間の賃貸運用による純収益が4000万円、1年後の資産価値が10.5億円であったとすると総合収益率は、

インカム・リターン=4000万円÷10億円=4%

キャピタル・リターン=(10.5億円-10億円)÷10億円=5%

トータル・リターン=4%+5%=9%

となります。

 

E.自己資金利回り/OCR(Cash on Cash Return)

自己資金利回りとは、自身が投資した資金に対して、どのぐらい手残りの資金が生まれたかを判断する利回り計算です。

「例題」

商業ビル売買価格5億円

自己資金5000万円

融資期間20年

融資金利1.5%

年間元利金返済額約2600万円

NOI5000万円※NOI:年間総収入-年間経費

計算式

5000万円(NOI)-約2600万円(元利均金年間返済額)=約2400万円

約2400万円÷5000万円=48%

商業ビルの純利回(NOI利回り)は、5000万円÷5億円(売買価格)=10%ですが、全額を自己資金であればCCRはNOI利回りは同じ10%です。借入金を資金調達できればCCRは48%となり約4.8倍に上昇したことになります。これがレバレッジ効果です。

不動産価格の査定

住居用・事業用等の不動産価格を算定する方法として3つの手法があります。
①原価法=不動産を取得するために必要な費用を求める方法
②取引事例比較法=不動産を取得する周辺で売買された取引事例をもとに比較検討する方法
③収益還元法=取得する不動産が将来生み出すであろう収益を求める方法

収益価格の求め方には大きく分けて直接還元法とDCF法があります。

直接還元法は、一定の期間の純収益を還元利回りによって還元する方法です。

DCF法は連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格をその発生時期に応じて現在の価値に割引き、それぞれを合計する方法です。

これらの2つの方法は、どちらが正確、優れているものではなく、双方のそれぞれの特徴を理解したうえで、検討手段として活用できます。実際に不動産鑑定評価では、どちらの方法も適用し、両価格を比較して検討することが多いです。

返済余裕率の考え方

返済余裕率とは、各年度の元利金返済前のキャッシュフローが、元利金返済の何倍にあたるかを計算したものです。
賃貸事業が健全に行われてるかを判断する指標となっております。
計算式は、返済余裕率=純収益÷毎期の返済額
一般的には、ちらの数値が1.2から1.5の範囲に収まっていれば安全と判断できます。裏を返すと元利金返済額が純収益の67%から80%相当に収まっていることを意味します。
金融機関は、安定した賃貸事業であれば低い返済余裕率でも融資を実行し、不安定な賃貸事業であれば高い返済余裕率を求めることもあります。
金融機関が求める不動産担保評価についてご説明します。不動産の担保評価の方法は、まず評価物件を更地と建付地に分けて計算します。建付地であれば、自己使用か賃貸事業で計算方法が異なります。更地と自己使用の場合は積算評価で行います。ちなみに積算評価の求め方は、前面の路線価×土地の㎡数です。賃貸事業の場合は、積算評価に加え収益評価を行います。
連帯保証人について
企業が特に中小企業の経営者は、融資を受ける際に連帯保証を求められる場合があります。近年、経営者に過大な経済負担を強いること避難が集まり、2013年「経営者保証ガイドライン」が措置されました。これは日本商工会議所と全国銀行協会が共同で策定したもので、法的拘束力はないものの、中小企業経営者に過度な保証債務の負担が被らないように以下内容を尊重・遵守することが期待されます。
・個人と法人が明確に分離されている場合は、経営者に個人保証を求めないこと。
・多額の個人保証を行っていても、事業再生や廃業した際には一定の生活費等を残すことや、現在の自宅に住み続けられるように検討すること。
・保証債務が履行時返済しきれない債務残高は原則として免除すること。
などがあげられますが、積極的に対応している金融機関はまだまだありません。

資金調達手段について

1)ストラクチャード・ファイナス=仕組み金融
株式や債券など伝統的な資金調達手段にとどまらず、ストラクチャー(仕組み)を工夫することで構成される新たな金融商品によって、企業や投資家を仲介する高度な金融手法です。
不動産証券化商品を通じて行われる資金調達や投資家により出資もこの一例です。
2)ノンリコース・ローン
債務者の信用や一般財産を担保に貸し出すリコース・ローンと異なり、貸出対象の事業や不動産そのものの収益力を担保として行うローンです。あくまで不動産の収益力や市場交換価値に着目して貸し出すやり方です。
担保処分後に残債があったとしても、債務者への返済義務はありません。なお通常の貸し出しよりも金利が高いことが一般的です。
3)クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、クラウド(群衆)とファンディング(資金調達)を組み合わせた造語です。
インターネットなどを介して不特定多数から資金調達をする手法です。
クラウドファンディングには様々な調達方法があり「寄付型」「商品やサービス型」「貸付型」「事業投資型」と大きく分けて4つに分類することができます。
これまで新しいビジネスモデルの立ち上げや実績に乏しい企業など銀行融資を得られたかった方が資金調達ができるようになった画期的な手法です。
不動産の投資の場合「貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレイディング)」が借入の代替手段となります。
「貸付型クラウドファンディング」とは、プラットフォーマー(運営事業者)が資金の需要者(借入人)と資金の供給者(投資家)をインターネット上で結びつけることによって資金調達を実現するスキームです。
2017年の国内クラウドファンディングの市場規模は1700億円推計されており、そのうちソーシャルレンディングは1500億円とも言われています。
一方で貸付先や担保についての虚偽や貸付先のモニタリング不足、プラットフォーマーの悪質な運営体制によるデフォルト事件も多発しています。今後、市場の健全化や発展の為には、こうしたコンプライアンスと制度上の両面の改善が必要だと考えます。
 
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