不動産税務の知識
不動産税務の知識
個人の場合の所得税は、原則1暦年の収入ではなく、収入から必要経費を控除した合計、すなわち1暦年の「所得」に対して課税される税金です。
計算式)所得金額=収入-必要経費
必要経費について、生活するために必要な「経費」は、収入を得るための支出ではないため、「必要経費」にはなりません。
1)累進課税
所得が多いほど担税力があるとし、1暦年の様々な所得を合算して、その合計金額を累進課税率を適用して所得に応じて課税を行うとされています。
2)所得と経費
収入とはその年において収入するべきことが確定した額をいいます。未収となっている金額も収入に含みますので注意が必要です。不動産所得の金額や雑所得などの金額の計算上差し引く必要経費は、これらの所得額に対応する売上原価
その他その収入を得るために直接要した費用の額およびその年の販売費および一般管理費、その他これらの業務上発生した費用をいいます。
3)個人所得の概要
所得税は、各種所得を①利子所得②配当所得③不動産所得④事業所得⑤給与所得⑥譲渡所得⑦一時所得⑧雑所得⑨山林所得⑩退職所得の10種類に分類しています。
①利子所得:預貯金および公社債の利子など
②配当所得:法人から受ける余剰金の波頭など
③不動産所得:不動産の権利、船舶または航空機の貸し付けによる所得
④事業所得:自由業(医師、弁護士など)、農業などによる事業所得
⑤給与所得:給与や賃金、賞与等
⑥譲渡所得:資産の譲渡による所得
⑦一時所得:懸賞金や生命保険満期の場合に受け取る一時金
⑧雑所得:①から⑦までおよび⑨・⑩以外の所得。公的年金や原稿料など
⑨山林所得:山林の伐採又は譲渡による所得
⑩退職所得:退職手当や一時恩給など。
このうち、損益通算できるのは、③不動産所得④事業所得⑨山林所得です。※⑥譲渡所得も損益通算できる場合があります。
不動産賃貸の所得に対する税金
不動産を賃貸している場合、不動産所得として所得税や住民税の課税対象となります。不動産所得は給与所得などの所得と合算して、確定申告により納税をします。
不動産賃貸業を始めた場合は、税務署に対して以下の届出書を提出します。
・個人事業開業の届出書・・・事業開始から1ヶ月以内に提出
・青色申告の承認申請書・・・青色申告を選択した場合
・減価償却資産の償却方法の届出書・・・定率法など償却方法を選定した場合
不動産所得の計算方法
計算式・・・不動産所得の金額=不動産収入金額-必要経費
①収入に含まれるもの
家賃、地代、権利金、更新料、礼金、共益費、敷金保証金(退去時に返還しないもの)
②収入として計上する時期
契約や慣習により支配日が定めれているもの・・・定められた支払日
支払いが定められていないもの・・・請求日により支払うべきものは請求日、その他のものは実際に支払を受けた日
礼金や権利金等・・・貸付物件の引渡しを要するものは引渡のあった日、引渡を要しないものは契約効力発生日
変換を要しない敷金および権利金・・・変換をようしないことが確定した年分
③必要経費として認められるもの
・土地や建物の固定資産税および都市計画税
・事業税・消費税・収入印紙・修繕費・損額保険料・不動産会社への管理手数料・管理会社への管理費・入居募集の為の広告宣伝費・税理士、弁護士報酬・減価償却費・立ち退き料・共用部分の水道光熱費・土地の購入・建物の建築の借入金金利・その他(清掃費、消耗品等)
④必要経費として認められないもの
・借入金の元本返済部分・住民税・所得税・事業に関連しない支出(自宅に係る経費など)
⑤必要経費と資産の取得価額
賃貸物件を購入に伴う様々な支出には、その年の必要経費とするものと、資産の取得価額に含めるべきものがあります。
『必要経費とするもの』土地や建物の不動産所得税、土地や建物の登録免許税、土地や建物の登記費用、収入印紙など
『取得価額に含めるべきもの』土地の購入金額、土地の上にある古屋建物代金および取り壊し費用、整地や埋め立て下水道工事費用、建物建築費および購入代金、設計変更費用、増改築リフォーム費用、エアコンや給湯器などの設備費、購入のための仲介手数料、土地や建物の借入金利など。
※購入時の仲介手数料などの土地や建物双方にかかる支出は、それぞれの購入金額の比率に按分します。建物の所得価額に含めた支出は、建物の減価償却費として必要経費としていきます。
減価償却費とは
減価償却は、建物やその付属設備などの減価償却資産を、税務上定められた償却方法で償却費を算定して、耐用年数でわり必要経費として費用配分する方式です。
使用可能期間が1年未満のもの又は、購入代金が10万円未満の少額の減価償却資産については、全額支払った年の必要経費として計上することができます。
減価償却できる資産は、建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両、器具備品があります。また減価償却の対象とならないものは、土地や事業用に供しない部分などがあります。
個人の場合は、原則、定額法により計算します。事前に「減価償却資産の償却方法の届出書」をその年の確定申告期限までに税務署に提出すれば定率法での計算が認められます。
定額法と定率法について
定額法は、毎年の減価償却費が同額となるように計算する方法です。
定率法は、初期に減価償却費を多くして、年が経つに従って減価償却費が一定の割合で減る計算方法です。
【法定耐用年数】
構造・用途 | 耐用年数 | 定額法償却率 |
木造 | 22年 | 0.046 |
木骨モルタル造 | 20年 | 0.050 |
SRC造・RC造 | 47年 | 0.022 |
軽量鉄骨 | 27年 | 0.038 |
電気設備・給排水・衛生設備・ガス設備等 | 15年 | 0.067 |
昇降機設備・エレベーター | 17年 | 0.059 |
消火・排煙・災害報知設備 | 8年 | 0.125 |
塀、外溝※鉄筋コンクリート 塀、外溝※コンクリート |
30年 15年 |
0.034 0.067 |
青色申告について
青色申告をしようとする場合、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければいけません。
青色申告の場合、以下の条件を満たしていると、不動産所得から65万円、要件をみたしていない場合は10万円を控除することができます。
・事業的規模※により不動産の貸付を行っていること
・正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記載していること
・確定申告書に貸借対照表・損益計算書等を添付して、申告期限内に提出すること
※事業的規模とは、不動産貸付規模が5棟以上10室以上社会通念上事業と称するに至る程度の貸付規模です。
事業的規模で不動産貸付を行っている場合、生計を一にしている配偶者やその他の親族(15歳以上)で、事業に専ら従事している人(青色事業専従者給与)に支払った給与は、適正な金額であれば必要経費として計上することができます。その他のメリットとして、不動産所得が赤字になり、純損失が生じた場合には、その損失を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得から差し引くことができたり、30万円未満の少額備品などの必要経費を算入することができます。ただし、所得価額の合計額300万円までが限度となります。
損益通算とは
損益通算できるのは、以下の4つの所得金額の計算上生じた損失に限られます。①不動産所得の金額の計上生じた損失
※損失のうち、土地などの取得する為に要した負債の利子の額に相当する部分の金額については損益通算することができません。つまり損失の額が土地の取得等に係る負債の利子の額を超える場合、超えた部分の損失額が損失の対象となります。
②事業所得の金額を計上した時に生じた損失
③譲渡所得の金額を計上した時に生じた損失
④山林所得の金額を計上した時に生じた損失
損失の繰り越し控除
青色申告者の純損失の金額は、翌年以降3年間の課税標準の計算上で控除することができます。青色申告の承認を受けていない場合は、以下に限定して繰越することが可能です。1)雑損失の繰越控除
①変動所得(原稿報酬など)の金額の計算上生じた損失
②被災買事業用資産の損失の金額
2)雑損失の繰越控除
災害や盗難などによって、生活上の資産について損害を受けた場合は、その損害額のうち一定額を雑損失として所得控除することができます。雑損失がその年の所得金額からひききれない場合は、翌年以降3年間まで繰り越して控除することが出来ます。
意外としらない非居住者の不動産売却代金および賃貸料に関する買主・賃借人の源泉徴収義務
1)非居住者物件の不動産売却時の源泉徴収義務非居住者が不動産を売却した場合、一定条件に該当する場合、不動産の購入者は売買題代金の支払い際、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収して税務署に支払う義務があります。つまり非居住者に支払われる金額は、売却代金の89.79%相当で、残りの源泉徴収した10.21%相当額については、不動産の購入者が対価の支払をした翌月の10日までに税務署に納付することになります。
但し、不動産売買金額が1億円以下で、購入した個人が自己またはその親族の居住の用に供するためのものであれば、源泉徴収の必要がありません。
※親族とは、配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族をいう。
2)非居住者の不動産賃貸時の源泉徴収
日本の居住者であっても非居住者であっても、日本国内で不動産所得などの不動産所得が生じた場合は、確定申告をして所得税額を計算し、税金を納めなければなりません。貸主が非居住者の場合、日本国内の賃貸物件を貸し付けた場合は、その賃料に対して所得税が源泉徴収することになります。
源泉徴収した賃借人は、その源泉徴収した所得税を賃料を支払った翌月10日までに税務署にの納付しなければなりません。ただし個人の賃借人が自らもしくは親族の居住用で賃借する場合には源泉徴収義務はありません。
※非居住者は日本に住所がない人
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