所有者不明土地

所有者不明土地

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  • 2019-10-20
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所有者不明土地問題を解消

所有者不明土地問題の解消を後押しする新法が、2019年5月17日に成立しました。土地とは資本の代表であり様々なビジネスの根本となすものであり、利用価値のある空き地があればいずれそこにアパートやマンションあるいは商業施設が建てられ有効に活用されていくことが考えられます。東京の都心の一頭地は空き地と呼べる場所はありません。地方都市でも中心地には建物が次々と建てられており、空き地は徐々に少なくなりつつあります。ところが全国で見ると空き地は増え続けています。空き地には所有者が明確な空き地と所有者が不明の空き地の2種類がありますが、所有者不明土地が年々増加していることが問題となっています。また現在、所有者不明土地は国土の20.1%とされており、所有者不明土地の面積は2040年までに合計で7,200,000ヘクタールにまで拡大すると言われています。

なぜ登記名義人が不明になってしまうのか?

登記名義人が不明の土地が増えるのは相続未登記が起こることが理由の1つと考えられています。土地の持ち主が死亡すると相続が発生します。通常は土地の相続が発生した時点で相続人が相続の登記を行い登記簿上の名義人が変更されますが、現状、土地相続登記については義務付けされていないこともあり、相続登記を行わない事例が増えています。相続登記を行わない理由はいろいろ考えられますが、例えば子供が地方から東京に出てきて生活している場合両親が亡くなって地方の土地や山林、農地等引き継ぐことになったとしても、もはや使わない土地になっているので登記をする際にかかる登録免許税や固定資産税、維持管理費等のコストを負担したくないと言う意識が強く相続登記を放棄するケースが増えております。特に地方は経済の発展が期待できないため若者を中心とする人口流出問題、深刻化しています。また先祖代々の土地を守っていくと言う意識も薄らいでいると考えられます。不動産価値が高まる期待もできなければ、様々なコストを負担してまで土地を所有しようと言う意識はさらに後退し相続登記を行うことなく死亡した人の名義のまま放置されるケースとなっているのが現状です。そうした土地について当初相続から月日が経過し何度か相続が生じれば相続人の数も増え場合によっては土地を所有している事自体が忘れ去られている可能性もあります。

所有者不明土地が増えると国土の利用や国土安全の観点から様々な問題が生じます。例えば災害から復興事業を行う際に所有者不明の土地が事業の妨げになるケースがあります。東日本大震災の復興事業では集団移転のための予定地を取得しようとしてもその土地の相続登記がされておらず所有者の所在地の把握が困難で事業がなかなか進まないと言う事態が発生しました。このような大規模災害でなくとも台風や洪水などの自然災害は毎年のように起こっています。所有者土地増加は由々しき問題となっています。

 

新たに整理した法律のポイント

1.所有者不明土地の登記の適正化を図るため登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を与え、所有者等探索委員制度を創設し、所有者の探索の結果を早期に反映させるための不動産登記法の特例を設ける。

2.所有者の探索を行った結果、所有者を特定することができなかった所有者不明土地について、その適正な管理を図るための措置として裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度を設ける。

特に注目すべき点は2であり裁判所が選任した管理者による管理が可能になったことがあります。まずこれにより該当する所有者不明土地について生い茂った草木の伐採が可能になります。これまで所有者が不明だったため誰の許可を得て伐採すれ良いのか分からず、山林などが荒廃する恐れがありましたが、裁判所が選任した管理者にその管理を任せればそれに歯止めをかけ、災害等を未然に防ぐための施策を講じることができるようになる可能性が高まりました。

また適正な管理の中に裁判所が選任した管理者や一定の条件のもとに自身の判断によってその土地の売却する行為が含まれます、この場合売却代金は所有者が現れたときに変換できるようにするための供託とし、そして供託金が事故を迎えるまで所有者が供託金の引き出しを求めることを求めてこなかった場合、供託金は国庫に帰属すると言う仕組みになりました。ただ今回の法整備は売却等が可能となった国土の1%程度にとどまると言われています。そのためより実効性のある制度の構築などの課題はありますが、着実に動き始めた所有者不明土地の取り組みの制度について動向を引き続き注目していきたいと思います。

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