民法と相続税法について

民法と相続税法について

  • MONEY
  • 2019-10-17
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オーナー様からお問い合わせが多かった相続税法について解説致します。

民法と相続法の違い

民法では、相続財産の評価は「時価」で行います。「時価」とは通常の売却可能額をベースに相続に関する権利や義務の範囲で定めます。

相続税法では、相続税の納税者と納税額の算出・納税方法を定めています。

つまり民法では相続権や財産権に関するもので、相続税法は相続税という国税の納税義務の範囲で定めています。相続税法第22条には「財産は時価で評価し、債務は現況による」と定めていますが、財産評価基本通達において定めた評価方法を時価とすることも認められています。

つまり

土地は「路線価方式や倍率方室」

家屋は「固定資産税評価額」

などを利用しても良いということになります。

不動産を処分することは時間やコストを要する為、相続税法では原則として現金化できる価格より低めの価額で設定することができます。

家屋は固定資産税評価額で計算しますが、貸家の場合は更に借家権の割合が差し引かれ評価されます。従って固定資産税評価額が同じ建物でも、自宅用建物より貸家を相続した者の相続税が低くなることなります。

小規模宅地についても民法と相続税法では大きく異なります。

例えば330㎡までの居住用地は、相続や遺贈による取得の場合、80%の評価減となるため、相続人の相続税評価額は大幅に減少し、小規模宅地等の評価減を受けれない土地を相続した相続人とは相続税額においてかなりの差が生じます。

現在の相続税法では、「法定相続分遺産取得課税方式」が採用されています。

【非相続人の相続財産】-【基礎控除額】=【課税遺産総額】

【課税遺産総額】からそれぞれの法定相続分に応じて相続税額を算出し、相続税を納めることになります。ところが民法上では、相続財産を均等に分割したにも関わらず、相続税の負担額は各個人によって異なります。意外と相続人の間では意識されていない為、注意が必要です。

相続財産の範囲については、相続発生時において被相続人の所有していた経済的価値のある財産や負債全てが相続財産となります。ところが相続税法ではみなし相続財産なども相続財産として加算しなければなりません。

みなし相続財産については代表的なものに以下のようなものがあります。

生命保険金:被相続人の死亡により受け取った生命保険金のうち、被相続人が負担した保険料に相当する金額
死亡退職金:被相続人の死亡により受け取った退職金で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した金額
生命保険契約の権利:契約者および非保険者が被相続人以外である生命保険契約において、被相続人が負担した保険料に相当する部分の金額

※①と②は一定金額が控除されます。

そのうえで、相続税法では相続人や受遺者に対して相続開始前3年以内に贈与した財産については、相続時において相続税の課税価格に含めなくてはいけません。

贈与財産加算についての注意点

相続や遺贈によって財産を取得した個人の場合、被相続人から生前贈与を受けていても、相続や遺贈時において相続人または受遺者でなければ贈与財産を加算する必要はありません。
贈与された財産を相続財産に加算する場合の評価額は相続時の評価ではなく、贈与時における評価。3年間で贈与財産の価格が上昇した場合、贈与による被相続対策の効果があります。ただし逆に低下している場合、贈与によって相続財産が高くなってしまうケースもあるので注意が必要です。
贈与時に支払った贈与税は相続税から差し引くことができます。

贈与時において贈与税を支払った場合(基礎控除110万円を超えた贈与)は、自分の支払う相続税から差し引くことができます。ただし、相続税より贈与税の方が支払いが多い場合、贈与税の還付を受けることはできません。

このように民法と相続税法にはいくつかの相違点があります。相続税法は民法を前提としていますが、相続税を算出するために定められているので、様々な特例や実務上の取扱いなど現実的な対応が必要です。

民法と相続税法について

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